目次
1.宅地の評価単位の基本

(1) 原則
宅地は、原則として次の4点を考慮して評価単位を決定します。この決定された宅地の評価単位を「1画地の宅地」といい、この画地を前提として自用地としての価額を計算します。
- 地目単位ごと
- 相続・遺贈・贈与等により取得した者ごと
- 利用の単位ごと
- 権利の態様ごと
なお、1画地の宅地は、必ずしも1筆の宅地からなるとは限らず、2筆以上の宅地からなる場合もあり、逆に1筆の宅地が2画地以上の宅地として利用されている場合もあることに注意します。
(2) 例外:不合理分割
遺産分割等により不合理な分割が行われた場合には、その分割前の画地を「1画地の宅地」として評価をしますので注意します。
2.居住用及び事業用として自ら使用している場合

(1) 評価単位の考え方
自己所有地に複数の建物があり、それらを自ら使用している場合には、たとえそれらの建物の用途が異なるとしても、その自用地全体を1画地の宅地として評価を行います。
これは、土地上の建物がどのような用途に供されていようとも、あるいは、複数の建物が建っているとしても、土地の所有者は自由に土地を使用収益することができることから、自用地全体を一体評価するのが合理的と考えられるためです。
(2) 例題

上の図の例では、甲の所有する土地に、自用の居宅と店舗があります。この場合、土地所有者甲はいつでも自由に土地を使用収益できますから、たとえ区画割りをして土地Aと土地Bを別々に利用している場合であっても、居住用の画地(A)と事業用の画地(B)を合わせた全体を1つの評価単位として取り扱います。
3.自用地と自用地以外の宅地が連接している場合

(1) 評価単位の考え方
自用地と自用地以外の宅地※1が連接している場合には、それらを別々の評価単位として評価をします。
これは、自用の宅地(自用地)については自己の使用収益を制約する他者の権利※2が付着していませんが、自用地以外の宅地については、土地所有者による自由な使用収益を制約する権利が付着しているため、自用地とは別個で評価をするのが合理的だからです。
- 借地権、賃借権、借家権等
- 貸宅地、貸家建付地、定期借地権若しくは賃借権等が付着する宅地又は自用地とこれらが混在する宅地
(2) 例題

上の図の例では、土地Aは自用地ですが、土地Bは自用地と貸家建付地が混在する宅地です。この場合、土地Bは乙の借家権の存在により、自由な使用収益が制約されるため、土地Aと土地Bの評価単位は別になります。
なお、本例における土地所有者甲の厳密な評価単位は、土地Aから道路へ通ずる「通路部分が明確に区分されているか否か」により次の通り異なります。


なお、この論点に関する詳しい解説は「通路部分が明確に区分されている場合といない場合の評価|無道路地の評価の実務」を参照してください。
4.使用貸借により貸し付けられている場合

(1) 評価単位の考え方
使用貸借により土地の貸付けが行われている場合には、その使用貸借による建物は存在しないものとして宅地の評価単位を考えます。また、使用貸借の目的となっている宅地の価額は「自用地価額」で評価をし、使用貸借権の価額は「零」として評価をします。
このように取り扱うのは、①使用貸借契約に基づく使用借権は借地借家法により保護されない脆弱な権利であること、②実務上も使用貸借契約は親族間や同族会社間などの人的な関係を背景に締結されるものであり、経済合理性に反する特殊な契約であることから、このような権利を宅地の評価単位の判定や評価額の計算において考慮するのはむしろ不合理であると考えられるためです。
相続税土地評価における使用貸借
使用貸借とは一般的に無償で土地や建物を貸しつけることを言いますが、相続税土地評価においては固定資産税及び都市計画税相当額以下の対価による貸付けも使用貸借に含まれます。
(2) 例題
事例 ①
次の図は、甲所有の土地上に甲の居宅と乙の店舗が建っている場合の例です。この時、乙は甲から無償で土地を借り受けているものとします。

この場合、乙は甲より土地を無償で借り受けていますから、店舗は使用貸借契約に基づき存在していることになります。
したがって、評価単位の判定に当たっては土地A・Bの上には、乙店舗は無く、甲居宅しか存在していないことになりますから、A土地とB土地をあわせた全体土地A・Bを1画地の宅地として評価をします。
事例 ②
次の図は、甲と乙の土地上に甲の居宅が建っている場合の例です。この時、甲は乙から無償で土地を借り受けているものとします。

この場合、甲は乙より土地Bを無償で借り受けていますから、土地B上の甲の居宅は使用貸借契約に基づき存在していることになります。
したがって、評価単位の判定に当たっては土地B上の居宅は存在しないものとして取り扱いますから、土地Aと土地Bは所有者が別ですから、それぞれが別々の評価単位となります。
5.貸宅地と貸家建付地が連接する場合

(1) 評価単位の考え方
貸宅地や貸家建付地、定期借地権等が付着する宅地が連接する場合には、原則としてそれらは別個の評価単位として考えます。
これは、貸宅地は借地権による、貸家建付地は借家権に基づく土地利用権による、定期借地権等が付着する宅地は定期借地権等による制約を土地所有者は受けることとなり、制約の程度が異なるものであるから、別々に評価をするのが合理的と考えられるからです。
(2) 例題
次の図は、甲所有の土地上に乙の事務所と甲の工場が建っている場合の例です。この時、乙は甲から有償で土地を借り受け、有効に借地権が成立しているものとします。また、甲は工場を有償で丙に賃貸しているものとします。

この場合、土地所有者甲にとって事務所敷地は「貸宅地」であり、工場敷地は「貸家建付地」ですから、土地Aと土地Bは別個の評価単位として取り扱います。
6.別々の者に土地を貸し付けている場合

(1) 評価単位の考え方
複数の貸宅地が連接している場合は、同一人に貸し付けられている貸宅地ごとに1画地の宅地として評価をします。
これは、借地権者が異なる場合には、土地所有者の使用収益に係る制約の内容も異なるのであるから、借地権者が異なるごとに評価単位を別にするのが合理的であるという考え方に基づきます。
▷ 借地権者が同一であるものの借地契約が異なる場合の評価単位
(2) 例題
次の図は、甲土地上に乙と丙の居宅が建っている場合の例です。この時、乙と丙は甲から有償で土地を借り受け、有効に借地権が成立しているものとします。

この場合、土地所有者にとって土地Aと土地Bは土地の貸付先が異なりますので、土地Aと土地Bは別々の評価単位として取り扱います。
なお、借地権者乙・丙については、それぞれが別人ですから当然にして土地Aと土地Bは別々の評価単位となります。
7.2以上の隣接する土地を借りている場合

(1) 評価単位の考え方
2以上の者から隣接している土地を借りてこれを一体として利用している場合における借地権の評価単位は、借地権の目的となっている土地全体を1画地の宅地として評価します。他方、貸宅地の評価単位は、それぞれの所有する土地ごとに1画地の宅地として評価します。
これは、複数の所有者と同一の建物につき土地賃貸借契約を締結する場合は、契約の内容は通常同一であり、利用状況も同じであることから、借地権が設定されている範囲を一の評価単位として捉えるのが合理的と考えられるためです。
(2) 例題
次の図は、乙と丙の所有地上に甲の工場が建っている場合の例です。この時、甲は乙と丙から有償で土地を借り受け、有効に借地権が成立しているものとします。

この場合、借地権の評価単位は借地権の及ぶ範囲である土地A・Bとなります。また、貸宅地の評価単位は土地Aは乙所有、土地Bは丙所有ですから、それぞれが別個の評価単位となります。
8.共同ビルの敷地として利用している場合

(1) 評価単位の考え方
全ての土地所有者の共同ビルの敷地として利用されている2以上の画地は、その共同ビルの敷地を1画地の宅地として評価します。
これは、共同ビルの敷地のように個々の宅地が他の宅地と一体となって利用されている場合には、他の宅地も併せた利用の単位となっている1画地の宅地の価額を評価した上で、個々の宅地を評価するのが合理的と考えられるためです。
(2) 例題
次の図は、甲・乙・丙・丁の所有の土地(A・C・D・B)の上に、甲・乙・丙・丁が共同で所有する事務所ビルが建っている場合の例です。

この場合、共同ビルの敷地として一体利用されている土地A・土地B・土地C・土地Dの全体宅地を一の評価単位として取り扱います。
また、この場合の各画地の評価額は、全体画地の価額を、全体画地を評価単位として評価をした価額に対して次のいずれかの割合により加重平均することで計算をします。
- 各画地の地積÷全宅宅地の地積
- 各画地の財産評価基本通達により評価した自用地価額÷全宅宅地の財産評価基本通達により評価した自用地価額
9.自用地と借地権が併設する場合

(1) 評価単位の考え方
自用地と借地権が連接し、同一建物の敷地として利用されている場合には、利用の単位が同一ですから自用地と借地の一体土地を1画地の宅地として評価をします。
また、当該自用地及び借地権の評価は、まず一体土地の自用地価額を求め、これを地積按分することで、各画地の自用地の価額を算出されます。借地権の価額はこれに借地権割合を乗ずることで求めます。
貸宅地の価額は、それぞれの所有する土地ごとに1画地の宅地として評価します。
自用地と借地権が連接し、同一建物の敷地として利用されている場合の権利関係を図解すると図のようになります。
(2) 例題
