目次
1.側方路線影響加算の基本


(1) 側方路線影響加算の基本
正面と側方に路線がある宅地(角地・準角地・三方路地・四方路地等)の価額は、次の(1)及び(2)に掲げる価額の合計額に、その宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価します。
(2) 側方路線影響加算が必要となる理由

角地や準角地等は、下記を理由に中間画地よりも価値が高いとされています。したがって、相続税土地評価においても、角地や準角地等である宅地については「側方路線影響加算」により加算調整を行います。
なお、実質1系統の路線に接道している準角地は、2系統の路線に接する角地と比べて効用の増大は低減します。
住居系用途の場合
- 日照、通風が良くなり、居住環境が向上します。
- 出入りの便が良くなり、利便性が向上します。
- 建物の建築をする際に、設計の自由度が向上します。
- 隣地に家が建たたないため、居住の快適性が向上します。
- 一定の要件を満たすとき、建ぺい率の緩和を受けることができます。
商業系用途の場合
- 視認性が向上します。
- 人や車両の流通量が増加します。
- 出入りの便が良くなり、利便性が向上します。
- 建物の建築をする際に、設計の自由度が向上します。
- 一定の要件を満たすとき、建ぺい率の緩和を受けることができます。
工業系用途の場合
- 車両の出入りの便が良くなり、利便性が向上します。
- 建物の建築をする際に、設計の自由度が向上します。
- 一定の要件を満たすとき、建ぺい率の緩和を受けることができます。
(3) 側方路線影響加算の計算例(角地)
次の土地は、普通住宅地区に所在する地積140㎡の角地です。

- 奥行価格補正後の路線価
正面路線価(82千円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)= 82千円/㎡ - 側方路線影響加算後の路線価
①(82千円/㎡) + 側方路線価(73千円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)× 側方路線影響加算率(0.03)= 84,190円/㎡
(4) 側方路線影響加算の計算例(準角地)
次の土地は、普通住宅地区に所在する地積72㎡の準角地です。

2.正面路線と側方路線の地区区分が異なる場合

(1) 側方路線影響加算率を参照する地区
正面路線と側方路線の地区区分が異なる場合は、正面路線が属する地区の側方路線影響加算率を使用して側方路線影響加算額を算出します。
ただし、正面路線を決定するための各路線の奥行価格補正後の路線価の計算では、その路線が属する地区の奥行価格補正率を使用します。
(2) 計算例

3.側方路線に宅地の一部が接している場合等
次のような土地については、側方路線影響加算の加算調整に当たり、側方路線への接道の程度・状況を考慮します。

一部接道の場合
左側の評土地は、側面の一部のみが側方路線に接している土地です。
不整形地の場合
右側の土地は、形状が不整形であるため、土地全体から見ると、敷地の側面が側方路線に接する程度が低い土地です。
上図のいずれの場合も、側方路線影響加算の加算調整に当たっては、側方路線を正面路線として描かれる想定整形地の間口距離(b)に対するその接している部分の長さ(a)を考慮して側方路線影響加算額を計算します。
(1) 宅地の一部が側方路線に接する場合の計算例

- 奥行価格補正後の路線価
正面路線価(82千円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)= 82千円/㎡ - 側方路線影響加算後の路線価
①(82千円/㎡) + 側方路線価(73千円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)× 側方路線影響加算率(0.03)× 影響割合(13m÷19m)= 83,498円/㎡
(2) 不整形な土地が側方路線に接する場合の計算例

4.側方路線が特定路線価が設定された路線の場合
特定路線価の設定の申出をした場合において、当該特定路線価が設定された路線を側方路線とする側方路線影響加算の加算調整は行いません。

上の図は、土地Aの評価のために特定路線価の設定の申出をし、50千円/㎡と回答を得た事例です。この場合、土地Aの評価に当たっては当該特定路線価を用いて画地調整を行いますが、土地Bの評価においては、特定路線価の設定された道路は側方路線ですから、当該特定路線価の付された道路による側方路線影響加算は行いません。
5.角地としての効用を発揮しない側方路線
側方路線と接している土地であっても、角地部分に他人土地が介在すること等により、現実に角地としての効用を発揮していない場合には、側方路線影響加算による加算調整は行わず、二方路線影響加算による加算調整を行います。

上の図の土地は、評価対象地が南側と西側で路線に接しており、奥行価格補正後の路線価の比較より、南側路線が正面路線、西側路線が側方路線に該当する土地です。
この場合、西側路線は正面路線から位置的に離れているため、角地ほどの効用増大をもたらす路線ではなく、実質的に二方路地としての効用しかもたらしていない路線と言えます。したがって、このような場合には、西側の側方路線については側方路線影響加算による加算調整に代えて二方路線影響加算による加算調整を行い、側方路線が存することによる価値増価を評価額へ反映します。
6.実質的に1路線に接する土地
次の土地は、幹線道路沿いにある角地です。評価対象地が接する2路線は共に同じ路線価記号による路線価が敷設されています。

路線価とは、宅地の価額がおおむね同一と認められる一連の宅地が面している路線ごとに設定された1㎡当たりの価額を言います。したがって、同一の路線価記号による路線価が敷設された路線は道路が屈折していたとしても、同じ系統の路線であるということになります。
角地による側方路線影響加算は、2系統の路線に接することによる効用増大を反映することを目的としていますから、上の図のように同一の路線価記号による路線価が敷設された路線に2面で接する土地については、実質的に1系統の路線に接していると考えられますから、側方路線影響加算の加算調整に当たっては、角地ではなく準角地の側方路線影響加算率を参照すべきです。
7.側方路線影響加算を行わない土地
角地とは敷地が2面で道路に接する土地を言い、一般的にこの2路線は互いに直交します。前述の通り、角地は中間画地と比較して効用の増大が認められますので、相続税土地評価においては、側方路線影響加算による加算調整を行うの原則です。
角地の価値が高い理由
- 日照、通風の良化による居住環境の向上
- 隣接地に建物が建築されないことによる居住環境の向上
- 人や車両の流入増加による収益性の向上
- 視認性の向上
- 出入りの便が良くなることによる利便性の向上
- 接道状況及び建ぺい率緩和による建築レイアウトの自由度の向上
しかしながら、次のような土地については、角地であっても側方路線影響加算を行う必要が無い場合があります。
もっとも、側方路線影響加算を行うか否かは基本的に「角地としての効用増大があるか否か」で判断すべき事項です。したがって、次の例示を杓子定規にとらえて画地調整をするのはリスクがありますので、参考にされる方はその点にご留意ください。
(1) 敷地と側方路線との間に高低差(落差)がある土地
下の図は、敷地と西側路線との間に落差がある場合の例です。左側の土地は敷地が道路に対して低く接しており、右側の土地は敷地が道路に対して高く接している場合の例です。

① 敷地が道路に対して低く接している場合(左)

上の図の土地のように、敷地が道路に対して低く接している場合には、基本的に側方路線影響加算による加算調整は不要です。なぜなら、角地としての効用増大は、住居系地域であれば日照、通風の良化、商業系地域であれば人や車両の流入増加による収益性の向上、工業系用途であれば貨物車両の出入りの便の向上が主たる増価要因となりますが、敷地が道路に対して低く接している場合には、これらの効用増大の影響が無いと言えるからです。
むしろ敷地と道路との高低差が大きく、日照・通風・乾湿などの居住環境が悪化したりするのであれば、住居系地域においては「利用価値が著しく低下している宅地」として減価をすべき事項となります。
② 敷地が道路に対して高く接している場合(右)

他方、上の図の土地のように、敷地が道路に対して高く接している場合には、側方路線影響加算による加算調整をすべきか否かは、評価対象地が属する地区区分または評価対象地の用途に応じて判断すべきでしょう。
例えば、評価対象地が住居系の地区区分に所在しているのであれば、側方路線影響加算による加算調整をすべきです。なぜなら、住居系用途の場合、角地であることによる価値増価は主として、日照・通風等の良化又は隣接空間の確保といった「居住環境の向上」にありますが、敷地が道路に対して高く接している場合にはこれらの価値増価が認められるほか、眺望・景観等が向上するなどの付加価値が生じるからです。
一方、評価対象地が商業系または工業系の地区区分に所在しているのであれば、基本的に加算調整は不要です。なぜなら、商業系用途の場合は、角地であることによる価値増価は主として「収益性の向上」にありますが、敷地が道路より高ければ、角地であったとしても人や車両の流入増加は認められず、出入りの便も悪く、角地であることが収益性の向上には繋がらないためです。
また、工業系用途の場合も同様に、角地であっても敷地と道路との間に落差があれば、大型の貨物車両の出入りが不可能であるため、工業系用途で特に重視される「貨物車両の出入りの便」の向上にはつながらず、角地であることによる価値増価は無いと言えるためです。
(2) 2路線間の角度が鈍角である土地
一般的に角地はその接する2路線が互いに直交する土地ですが、角地の中にはその2路線が直交せずに、鈍角(90度以上)で交わるような土地もあります。このように2路線が鈍角で交わる角地のうち、次のような土地については側方路線影響加算による加算調整が不要な場合があります。
- 建ぺい率の緩和措置が適用されない土地
- 2路線間の角度が150度を超える土地
① 建ぺい率の緩和措置が適用されない土地
次の土地は2路線に接する角地ですが、2路線間の角度が130度であり、特定行政庁が指定する角地に該当しない土地です。

角地であることによる建ぺい率の緩和措置は「特定行政庁が指定する角地」に対して適用されます。ここで、特定行政庁が指定する角地とは、建築主事を置く地方公共団体の長が定める一定の要件を満たす角地のことを言いますが、ほとんどの特定行政庁ではこの角地の要件の一つに「2路線間の角度が120度以内(または未満)であること」という要件を規定しています。
したがって、交わる二路線の角度が120度を超えるような角地については、建ぺい率の緩和措置を受けられないことから、側方路線影響加算による加算調整をしないことが考えられます。
しかしながら、角地であることによる効用増大は建ぺい率の緩和措置だけではないため、当該事情をもってのみ側方路線影響加算を行わないと判断することには一定のリスクがあります。
② 2路線間の角度が150度以上の土地
次の土地は2路線に接する角地ですが、2路線間の角度が150度である土地です。

上の図の土地のような場合、2路線間の角度が大きいため、実質的に屈折道路に接している中間画地と変わりがありません。したがって、このような場合には、評価対象地は角地でなく、南側路線と南西側路線を正面路線とする中間画地であるものとして評価計算を行います。
なお、150度が絶対的な角度ではありませんので、現地調査を踏まえ、評価対象地が角地としての効用を発揮しているのか、それとも中間画地としての効用しか発揮していないのかを判断すべき内容となります。