1.路線価
路線価とは、宅地の価額が、①おおむね同一と認められる、②一連の宅地が面している路線ごと、に設定された1㎡当たりの価額をいいます。なお、ここでいう路線とは、不特定多数の者の通行の用に供されている道路をいいます。

この路線価は、路線に接する宅地で次のすべての事項に該当するものについて、売買実例価額、公示価格、不動産鑑定士等による鑑定評価額、精通者意見価格等を基に国税局長がその路線ごとに評定したものです。
- その路線のほぼ中央部にあること。
- その一連の宅地に共通している地勢にあること。
- その路線だけに接していること。
- その路線に面している宅地の標準的な間口距離及び奥行距離を有するく形又は正方形のものであるこ と。
標準的な間口距離及び奥行距離
上記の④の標準的な間口距離及び奥行距離とは、次のイ及びロをいずれも満たす画地をいいます。
2.正面路線と正面路線価
正面路線とは、評価対象地の正面にある相続税路線価の付された道路又は路線のことをいいます。また、正面路線価とは、その正面路線に付された相続税路線価のことをいいます。

上の図の例では、評価対象地は南側で相続税路線価のある道路に接していますので、正面路線は南側にある道路となります。また、南側道路に「100D」とありますので、正面路線価は100千円/㎡となります。
なお、この場合の「D」は借地権割合が60%であることを意味しています。
3.2つ以上の路線に接する土地の正面路線の判定
評価対象地が2つ以上の路線価の付された道路に接する場合には、奥行価格補正後の路線価が最も高い方の路線を正面路線として判定をします。
なお、奥行価格補正後の路線価が同額の場合には、原則として、路線に接する距離が長い方の路線を正面路線として判定をします。
- (参考)奥行価格補正|図解付き
(1) 角地の場合の例
次の土地は、南側路線と西側路線に接する角地です。

- 南側路線の奥行価格補正後の路線価
100千円/㎡ × 奥行価格補正率(0.99)= 99千円/㎡ - 西側路線の奥行価格補正後の路線価
95千円/㎡ × 奥行価格補正率(1.00)= 95千円/㎡ - ①>②より、南側路線を正面路線と判定
(2) 二方路地の場合の例
次の土地は、南側路線と北側路線の2面で接する二方路地です。

- 南側路線の奥行価格補正後の路線価
80千円/㎡ × 奥行価格補正率(1.00)= 80千円/㎡ - 西側路線の奥行価格補正後の路線価
65千円/㎡ × 奥行価格補正率(1.00)= 65千円/㎡ - ①>②より、南側路線を正面路線と判定
(3) 奥行価格補正後の路線価が同額の場合
次の土地は、南側路線と北側路線の2面で接する角地です。

- 南側路線の奥行価格補正後の路線価
100千円/㎡ × 奥行価格補正率(0.95)= 95千円/㎡ - 西側路線の奥行価格補正後の路線価
95千円/㎡ × 奥行価格補正率(1.00)= 95千円/㎡ - ①=② かつ 38m > 20m より、西側路線を正面路線と判定
4.1路線に2つの路線価がある場合の正面路線価
評価対象地の正面路線に2つの異なる相続税路線価が付されている場合があります。
このような場合における評価対象地の正面路線価は、それぞれの路線価に評価対象地がそれぞれの路線に接する部分の長さを考慮した加重平均割合を乗じて得た路線価を合計して正面路線価を計算します。
(1) 基本的な計算例
次の土地は、北側道路(正面道路)に2つの異なる路線価が付されている土地の例です。

- 正面路線価
= 82,000円/㎡ × 15m/25m + 73,000円/㎡ × 10m/25m
= 78,400円/㎡
(2) 応用的な計算例:不整形地かつ複数路線に接する土地の場合
次の土地(甲)は、①不整形、②二方路地、③一つの路線に2の路線価が付された土地の例です。

- 北側路線(A)の奥行価格補正後の路線価
イ)奥行価格補正前の路線価
82,000円/㎡ × 15m/25m + 73,000円/㎡ × 10m/25m = 78,400円/㎡
ロ)奥行価格補正後の路線価
イ(78,400円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)= 78,400円/㎡ - 南側路線(B)の奥行価格補正後の路線価
81,000円/㎡ × 奥行価格補正率(0.95)= 76,950円/㎡ - 正面路線の判定
①>②より、 北側路線を正面路線と判定 - 正面路線価
78,400円/㎡
5.2つ以上の路線に接する土地の正面路線の判定の例外
前述の通り、評価対象地が2以上の相続税路線価の付された路線に接している場合には、原則として、奥行価格補正後の路線価が最も高くなる路線を正面路線として判定します。
しかしながら、次の2つのケースについては、この原則的な取扱いによらずに正面路線の判定を行います。
(1) 路線価の高い路線の影響を受ける度合いが著しく低い場合(任意)
評価対象地が奥行価格補正後の路線価が最も高い路線の属する地域の影響を受ける度合いが著しく低いと認められる場合には、原則的な取扱いに替えて、その宅地が最も影響を受ける路線を正面路線として判定をすることができます。

例えば、上の図の土地(甲・乙)の正面路線の判定を杓子定規に行うと次の通り、南側路線が正面路線として判定されます。
- 南側路線の奥行価格補正後の路線価
200,000円/㎡ × 奥行価格補正率(1.00)= 200,000円/㎡
※但し、奥行距離を20mとして計算 - 西側路線の奥行価格補正後の路線価
120,000円/㎡ × 奥行価格補正率(1.00)= 120,000円/㎡
※但し、奥行距離を15mとして計算 - 正面路線の判定
①>②より、 南側路線を正面路線と判定
しかしながら、上記のような評価対象地の場合、南側路線に接する部分(間口)の長さが狭小であり、また、接道義務も満たしていないことから、正面路線と判定された南側路線の属する地域の影響を受ける度合いが著しく低いと認められます。
このような場合には、原則的な取扱いに替えて、その宅地が最も影響を受ける路線(上記の場合には西側路線)を正面路線として判定をすることができます。なお、上記の例のような帯状部分を有する土地については不整形地補正を行わない場合がありますので注意します。
(2) 容積率に係る減額調整後の正面路線価が他の路線価を下回る場合(強制)
評価対象地が、角地、準角地、二方路地、三方路地又は四方路地である場合において、正面路線の奥行価格補正後の路線価に「容積率の異なる2以上の地域にわたる宅地の評価」を行った結果得た価額が、正面路線以外の路線の奥行価格補正後の路線価を下回る場合には、その他の路線のうち、奥行価格補正後の路線価の最も高い路線を正面路線とみなします。
計算例
次の土地は、三大都市圏に存する土地で、容積率が400%と200%に指定された地域にまたがっています。なお、前面道路の幅員による容積率の制限は無いものとします。

- 南側路線の奥行価格補正後の路線価
イ)差引計算による場合の奥行価格補正後の路線価
㋑南側路線価(70千円/㎡) × 奥行価格補正率(0.86)×3,000㎡=180,600千円
㋺南側路線価(70千円/㎡) × 奥行価格補正率(1.00)×500㎡=35,000千円
㋩(㋑ ー ㋺)÷ 2,500㎡= 58,240円/㎡
ロ)計算上の奥行距離による場合の奥行価格補正後の路線価
南側路線価(70千円/㎡) × 奥行価格補正率(0.86)= 60,200円/㎡
ハ)イ<ロより 58,240円/㎡ - 奥行価格補正後かつ減額調整後の路線価
①(58,240円/㎡)×(1- 控除割合(0.20))= 46,592円/㎡
∵ 控除割合 = {1-(400%×500㎡ + 200%×2,000㎡)÷(400%×2,500㎡)} ×0.5=0.20 - 北側路線の奥行価格補正後の路線価
イ)区分整形地による場合の奥行価格補正後の路線価
㋑北側路線価(55千円/㎡)× 奥行価格補正率(0.86)×1,500㎡=70,950千円
㋺北側路線価(55千円/㎡)× 奥行価格補正率(0.91)×1,000㎡=50,050千円
㋩(㋑ + ㋺)÷2,500㎡=48,400円/㎡
ロ)計算上の奥行距離による場合の奥行価格補正後の路線価
北側路線価(55千円/㎡) × 奥行価格補正率(0.89)=48,950円/㎡
ハ)イ<ロより、48,400円/㎡ - ②<③より、北側路線を正面路線価と判定
参考
- 相続土地評価.com
- 国税庁HP
- 正面路線の判定(1)(質疑応答事例)
- 正面路線の判定(2)(質疑応答事例)
- 路線価の高い路線の影響を受ける度合いが著しく少ない場合の評価(質疑応答事例)
- 正面路線に2以上の路線価が付されている場合の宅地の評価(質疑応答事例)