目次
1.間口が狭い宅地・奥行が長大な宅地

(1) 間口狭小・奥行長大とされる土地
相続税土地評価における「間口が狭小な宅地」とは、次の表に掲げる間口距離を有する宅地をいいます。また「奥行長大な宅地」とは奥行距離を間口距離で除して得た数値が次の表に掲げるものをいいます。
地区区分 | 間口が狭小な宅地 | 奥行が長大な宅地 |
---|---|---|
間口距離 | 奥行距離÷間口距離 | |
ビル街地区 | 28m未満 | – |
高度商業地区 | 8m未満 | 3以上 |
繁華街地区 | 4m未満 | 3以上 |
普通商業・併用住宅地区 | 6m未満 | 3以上 |
普通住宅地区 | 8m未満 | 2以上 |
中小工場地区 | 10未満 | 3以上 |
大工場地区 | 28m未満 | – |
なお、相続税土地評価においては、ビル街地区と大工場地区に所在する土地は、原則として奥行長大による補正は行いません。
(2) 間口狭小・奥行長大の補正が必要な理由
土地は間口が狭いと、人や車両の出入りが不便になるのはもちろんのこと、住宅地では日照や通風が不良となり、商業地では視認性が劣るなど、土地の利用価値が低下します。
奥行が長大な土地は、敷地内に通路部分が多く必要となるため、宅地としての利用効率が低下するとともに、建築レイアウトの制限を受けること等から、土地の利用価値が低下します。
したがって、相続税土地評価では間口狭小な土地と奥行長大な土地については、路線価の計算に当たり「間口狭小補正」及び「奥行長大補正」を行うことにより、土地の利用価値低下を評価額へ反映することとしています。
2.間口が狭い宅地と奥行が長大な宅地の評価

(1) 評価の基本
「間口が狭小な宅地」または「奥行が長大な宅地」の価額は、奥行価格補正、側方路線影響加算、二方路線影響加算、三方又は四方路線影響加算までの定めによって計算した1㎡当たりの価額に間口狭小補正率及び奥行長大補正率を乗じて求めた価額に、これらの宅地の地積を乗じて計算した価額によって評価します。
この場合において、地積が大きいもの等にあっては、近傍の宅地の価額との均衡を考慮し、それぞれの補正率表に定める補正率を適宜修正することができます。
① 地積規模の大きな宅地の評価の適用がある場合
地積規模の大きな宅地の評価の適用がある場合には、上記により評価した価額に、規模格差補正率を乗じて計算した価額によって評価をします。
② 不整形地又は無道路地の場合
間口狭小又は奥行長大な不整形地又は無道路地については、不整形補正の計算の中で間口狭小補正又は奥行長大補正を反映することとしているため、本規定の適用はありません。
(2) 補正率表
① 間口狭小補正率表(H19年分以降用)
地区区分
間口距離 (メートル) |
ビル街地区 | 高度商業地区 | 繁華街地区 | 普通商業・併用住宅地区 | 普通住宅地区 | 中小工場地区 | 大工場地区 |
---|---|---|---|---|---|---|---|
4未満 | – | 0.85 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 0.80 | 0.80 |
4以上 6未満 | – | 0.94 | 1.00 | 0.97 | 0.94 | 0.85 | 0.85 |
6以上 8未満 | – | 0.97 | 1.00 | 1.00 | 0.97 | 0.90 | 0.90 |
8以上 10未満 | 0.95 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.95 | 0.95 |
10以上 16未満 | 0.97 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.97 |
16以上 22未満 | 0.98 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.98 |
22以上 28未満 | 0.99 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 0.99 |
28以上 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 | 1.00 |
② 奥行長大補正率表
地区区分
奥行距離 ÷ 間口距離 |
ビル街地区 | 高度商業地区 繁華街地区 普通商業・併用住宅地区 | 普通住宅地区 | 中小工場地区 | 大工場地区 |
---|---|---|---|---|---|
2以上 3未満 | 1.00 | 1.00 | 0.98 | 1.00 | 1.00 |
3以上 4未満 | 1.00 | 0.99 | 0.96 | 0.99 | 1.00 |
4以上 5未満 | 1.00 | 0.98 | 0.94 | 0.98 | 1.00 |
5以上 6未満 | 1.00 | 0.96 | 0.92 | 0.96 | 1.00 |
6以上 7未満 | 1.00 | 0.94 | 0.90 | 0.94 | 1.00 |
7以上 8未満 | 1.00 | 0.92 | 0.90 | 0.92 | 1.00 |
8以上 | 1.00 | 0.90 | 0.90 | 0.90 | 1.00 |
3.間口が狭い宅地と奥行が長大な宅地の評価の計算例

(1) 間口が狭小な土地の計算例
次の図は、間口が3m、奥行が5mの間口の狭小な土地の例です。

- 奥行価格補正後の路線価
正面路線価(70千円/㎡)× 奥行価格補正率(0.92)= 64,400円/㎡ - 間口狭小補正後の路線価
①(64,400円/㎡)× 間口狭小補正率(0.9)=57,960円/㎡ - 利用価値が著しく低下している宅地であることによる補正
②(57,960円/㎡)×( 1 - 10%)= 52,164円/㎡
∵著しく地積が小さく、土地全体の利用価値が著しく低下しているため。 - 自用地価格
③(52,164円/㎡)× 15㎡ = 782,460円
本例の評価対象地は地積過小な土地のため「利用価値が著しく低下している宅地の評価」により10%の評価減を考慮しています。
しかしながら、評価対象地の状況によってはさらなる評価減が相当と認められる場合もあります。隣接土地の利用状況、地域の宅地化の状態、過小土地の需給の動向等を分析し、必要であれば不動産鑑定評価を利用した評価減も考えられます。
(2) 奥行が長大な土地の計算例
次の図は、間口が9m、奥行が20mの奥行長大な土地の例です。

- 奥行価格補正後の路線価
正面路線価(70千円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)= 70千円/㎡ - 奥行長大補正後の路線価
イ)奥行長大補正率
20m÷9m=2.22 ∴0.98
ロ)奥行長大補正後の路線価
①(70千円/㎡)× 奥行長大補正率(0.98)= 68,600円/㎡ - 自用地価格
②(68,600円/㎡)× 180㎡ = 12,348千円
(3) 間口狭小かつ奥行長大な土地の計算例
次の土地は、普通住宅地区に存する間口3m、奥行10mの間口狭小・奥行長大な土地の例です。

- 奥行価格補正後の路線価
正面路線価(70千円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)= 70千円/㎡ - 間口狭小・奥行長大補正後の路線価
イ)間口狭小補正率 0.94 ∵4m(普通住宅地区)
ロ)奥行長大補正率 0.98 ∵10m÷4m=2.5(普通住宅地区)
ハ)①(70千円/㎡)× イ(0.94)× ロ(0.98)=64,484円/㎡ - 利用価値が著しく低下している宅地であることによる補正
②(64,484円/㎡)×( 1 - 10%)= 58,035円/㎡
∵著しく地積が小さく、土地全体の利用価値が著しく低下しているため。 - 自用地価格
③(58,035円/㎡)× 40㎡ = 2,321,400円
(4) 不整形地である場合の間口狭小・奥行長大補正
評価対象地が不整形地であり、かつ、間口狭小又は奥行長大である場合には、不整形地補正率の査定において、当該間口狭小・奥行長大は考慮されているものと考えるため、間口狭小補正又は奥行長大補正を行いません。
次の図は、間口狭小かつ奥行長大かつ不整形な土地の例です。

- 奥行価格補正後の路線価
イ)計算上の奥行距離による奥行価格補正後の路線価
正面路線価(70千円/㎡)× 奥行価格補正率(0.97)= 67,900円/㎡
ロ)差引計算による奥行価格補正後の路線価
㋑正面路線価(70千円/㎡)× 奥行価格補正率(0.97)×117㎡= 7,944,300円
㋺正面路線価(70千円/㎡)× 奥行価格補正率(0.97)×33㎡= 2,240,700円
㋩(㋑ー㋺)÷84㎡=67,900円/㎡
ハ)イ=ロより 67,900円/㎡ - 不整形補正後の路線価
イ) かげ地割合
(117㎡-84㎡)÷ 117㎡ = 28.20%
ロ)不整形地補正率
普通住宅地区、地積区分:A、かげ地割合:28.20% ∴0.92
ハ)間口狭小・奥行長大であることを考慮した不整形地補正率
㋑ 不整形地補正率(0.92)× 間口狭小補正率(0.90)= 0.82
㋺ 間口狭小補正率(0.90)× 奥行長大補正率(0.94)= 0.84
㋩ ㋑<㋺より 0.82(≧0.60) ∴0.82
二)不整形地補正後の評価対象地の路線価
①(67,900円/㎡)× ハ(0.82)=55,678円/㎡ - 自用地価格
②(55,678円/㎡)× 84㎡ = 4,476,952円
(5) 無道路地である場合の間口狭小・奥行長大補正

評価対象地が無道路地である場合である場合には、間口狭小補正又は奥行長大補正は行いません。なお、無道路地の評価では、その評価過程の中で不整形補正を行いますので、その不整形補正の計算の過程で間口狭小・奥行長大補正が行われることになります。