地積規模の大きな宅地とその判定基準|図解付き

1.地積規模の大きな宅地

地積規模の大きな宅地の4要件
地積規模の大きな宅地の要件

地積規模の大きな宅地とは、周辺の宅地と比較して地積規模の大きな宅地であり、次の要件を満たす宅地をいいます。

  1. 地積要件
    地積規模が1,000㎡以上(三大都市圏の場合は500㎡以上)
  2. 地域要件
    市街化調整区域または工業専用地域のいずれにも存しない
  3. 容積率要件
    容積率が400%以内(東京23区は300%以内)
  4. 地区要件
    普通住宅地区または普通商業・併用住宅地区
  5. 非該当要件(評価対象地が倍率地域に所在する場合)
    大規模工場用地に該当しないこと

2.地積規模の大きな宅地の評価が必要となる理由

地積規模の大きな宅地の需要者は、専ら不動産デベロッパー(開発分譲業者)となります。この不動産デベロッパーは、購入した土地を宅地分譲開発し、最終的にエンドユーザーに販売をし、その販売価額と投資額との差額を開発利益として得ることになります。

地積規模の大きな宅地の例
地積規模の大きな宅地の例

しかしながら、宅地分譲開発は通常の土地の売買と比べて、開発費用の発生、潰れ地の発生、期間の長期化に伴う費用の上振れ、社会・経済情勢の変化、金利の負担増大など、様々なリスクが存在します。

このようなリスクを考慮し、相続税の財産評価における土地評価では、地積規模の大きな宅地の評価として規模格差補正をすることとしていますが、本通達においては特に次の3点を土地評価額に反映することを主旨としています。

(1) 潰れ地の負担による減価

地積規模の大きな宅地を戸建住宅用地として分割の上分譲する場合には、一定の場合を除き、道路、公園等の公共公益的施設用地の負担が必要となります。この負担により、戸建住宅用地として有効に利用できる部分の面積が減少することになるため、このようないわゆる「潰れ地」部分の負担が減価要因となります。

(2) 工事・整備費用等の負担による減価

地積規模の大きな宅地を戸建住宅用地として分譲する場合には、住宅として利用するために必要な上下水道等の供給処理施設の工事費用の負担を要するとともに、開設した道路等の公共公益的施設の整備費用等の負担が必要となります。また、開発分譲地の販売・広告費等の負担も必要となります。

開発分譲業者は、これらの費用負担を考慮して宅地の仕入れ値(購入価格)を決定することになるため、これらの工事・整備費用等の負担が減価要因となります。

(3) 開発分譲業者の事業収益・事業リスク等の負担による減価

地積規模の大きな宅地を戸建住宅用地として分譲する場合には、開発分譲業者は、開発利益を確保する必要があります。また、開発する面積が大きくなるにつれ販売区画数が多くなるため、開発分譲業者は、完売までに長期間を要したり、売れ残りが生じるというリスクを負います。さらに、開発分譲業者は、通常、開発費用を借入金で賄いますので、開発の準備・工事期間を通じた借入金の金利の負担が必要となります。

造成費用の取り扱い

広大地の評価では造成費用の負担が広大地補正率に織り込まれていましたが、地積規模の大きな宅地の評価では、造成費用の負担は規模格差補正率に反映されていません。したがって、造成工事が必要な土地の評価に当たっては、造成費用相当額の評価減を別途考慮する必要があります。

3.地積要件(要件①)

地積要件とは、評価対象地の地積が次の地積以上であることを求めた要件です。

評価対象地が存する圏域地積
三大都市圏500㎡以上
それ以外の地域1,000㎡以上
地積規模の大きな宅地の地積要件

評価対象地が三大都市圏の内に存するか否かにより判定の基準となる地積の大きさが異なるため、注意します。

(1) 共有地である場合の地積

複数の者に共有されている宅地の地積の判定は「共有地全体の地積」により行います。

三大都市圏内に存する共有宅地の例(地積:800㎡、甲・乙が1/2ずつ共有)
三大都市圏内に存する共有宅地の例

上の図の土地の例では、共有地全体の地積が800㎡(≧500㎡)であるため、地積要件を充足します。共有地の面積(800㎡×1/2=400㎡)で判定するわけではありませんので、注意します。

(2) 地積要件をギリギリ満たさない場合の対応

評価対象地が地積要件を満たさない場合には、原則として、地積規模の大きな宅地として評価をすることはできません。

しかしながら、評価対象地が属する地域の開発動向や評価対象地の地積、形状等を考慮し、地積規模の大きな宅地として評価をすることができる場合もあります。

4.地域要件(要件②)

地域要件とは、評価対象地が次のいずれの地域にも所在しないことを求めた要件です。

  • 市街化調整区域
  • 都市計画法に規定する工業専用地域

なお、評価対象地が用途地域が定められていない地域に所在する場合には、工業専用地域に指定されている地域以外の地域に所在するものと判定されます。

(1) 市街化調整区域に所在する場合の例外

評価対象地が市街化調整区域内に存する場合には原則として地域要件を充足しません。

ただし、評価対象地が市街化調整区域内に存する場合であっても、都市計画法第34条第10号・第11号の規定に基づき、宅地分譲に係る開発行為を行うことができる場合には、地域要件を充足することとなります。

(2) 異なる用途地域にまたがる場合の用途地域の判定

評価対象地が準工業地域と工業専用地域にまたがる場合
評価対象地が異なる用途地域にまたがる場合

評価対象地が異なる用途地域にまたがる場合には、評価対象地全体が評価対象地の過半の属する用途地域に所在するものとして用途地域の判定を行います。

ちなみに、都市計画法においても、土地が複数の用途地域をまたぐ場合には、その土地の過半が属する用途地域の用途規制を受けることとなっています。

5.容積率要件(要件③)

容積率要件とは、評価対象地の容積率が次の容積率未満であることを求めた要件です。

評価対象地が存する地域指定容積率
東京都の特別区300%未満
それ以外の地域400%未満
容積率要件

なお、評価対象地が東京都の特別区(23区)内に存するか否かにより、判定の基準となる指定容積率の大きさが異なるため、注意します。

(1) 指定容積率の異なる地域にまたがる場合の容積率

容積率が異なる地域にまたがる地積規模の大きな宅地
指定容積率が異なる地域にまたがる場合

評価対象地が指定容積率の異なる2以上の地域にわたる場合における評価対象地の容積率は、各地域の指定容積率に、各地域の地積の加重平均割合を乗じたものの合計となります。

(2) 基準容積率が指定容積率を下回る地積規模の大きな宅地

地積規模の大きな宅地の容積率の判定は「指定容積率」により行います。したがって、評価対象地の基準容積率が400%未満(特別区の場合は300%未満)であっても、評価対象地の指定容積率が400%未満(特別区の場合は300%未満)であれば、地積規模の大きな宅地の容積率要件を満たさず、したがって規模格差補正をすることはできません。

基準容積率が地積規模の大きな宅地の評価の要件を満たす場合

上の図では、評価対象地の基準容積率は、前面道路の幅員の関係により240%(=4m×0.6)となりますが、指定容積率は400%ですから、容積率要件を満たしません。

6.地区要件(要件④)

地区要件とは、評価対象地が次のいずれかの地区に所在することを求めた要件です。

  • 普通商業・併用住宅地区
  • 普通住宅地区

(1) 2以上の地区にまたがる場合の地区区分の判定

評価対象となる宅地が工業専用地域とそれ以外の用途地域にわたる場合
正面路線が2以上の地区にわたる場合

評価対象地が属する地区の判定は、その評価対象地の正面路線が属する地区区分に基づき行いますが、評価対象地の正面路線が2以上の地区にわたる場合には、その宅地の過半の属する地区が評価対象地の属する地区区分となります。

7.非該当要件(要件⑤)

非該当要件とは、評価対象地が倍率地域に所在する場合に、大規模工場用地に該当しないことを求めた要件です。

大規模工場用地
大規模工場用地

ここで、大規模工場用地とは、一団の工場用地の地積が5万㎡以上のものをいいます。ただし、路線価地域においては、地区区分の定めにより大工場地区として定められた地域に所在するものに限られます。

一団の工場用地

一団の工場用地とは、工場、研究開発施設等の敷地の用に供されている宅地及びこれらの宅地に隣接する駐車場、福利厚生施設等の用に供されている一団の土地をいいます。

なお、その土地が、不特定多数の者の通行の用に供されている道路、河川等により物理的に分離されている場合には、その分離されている一団の工場用地ごとに評価することに留意します。

8.市街地農地等に所在する地積規模の大きな宅地

市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林及び市街地原野について「地積規模の大きな宅地の評価」の適用要件を満たす場合には、その適用対象となります。ただし、路線価地域にあっては、宅地の場合と同様に、普通商業・併用住宅地区または普通住宅地区に所在するものに限られるため注意が必要です。

地積規模の大きな宅地として評価をする市街地農地等
地積規模の大きな宅地として評価をする市街地農地等

例えば上の図の場合、土地Aと土地Bはいずれも地積規模の大きな宅地に該当します。

  • 土地A:普通商業・併用住宅地区に所在する市街地農地のため
  • 土地B:倍率地域に所在する農地のため

(1) 規模格差補正をしない市街地農地等

市街地農地等であっても、次のような場合には戸建住宅用地としての宅地分譲が実質的想定されないため「地積規模の大きな宅地の評価」の適用対象とはなりません。

  1. 宅地へ転用するには多額の造成費を要するため、経済合理性の観点から宅地への転用が見込めない場合
  2. 急傾斜地などのように宅地への造成が物理的に不可能であるため宅地への転用が見込めない場合

(2) 規模格差補正と宅地造成費

広大地評価においては広大地補正率の中に宅地造成費用の負担による減価が考慮されていましたが、本通達の補正率には宅地造成費用の負担による減価が考慮されていませんので、市街地農地等につき本通達を適用する場合には、造成費相当額を控除することとなっています。