不動産譲渡

１．不動産譲渡に係る課税関係の種類 個人から法人への譲渡 (1) 不動産譲渡に係る課税関係の種類 不動産譲渡に係る課税関係は「譲渡当事者の属性」と「譲渡対価の額」によって異なります。 譲渡当事者の属性 個人から個人への不動産譲渡個人から法人への不動産譲渡（本記事）法人から個人への不動産譲渡法人から法人への不動産譲渡 譲渡対価の額 無償譲渡低額譲渡時価譲渡高額譲渡 (2) 個人から法人への不動産譲渡に係る課税関係 個人から法人へ不動産を譲渡した場合の課税関係をまとめると次の表の通りとなります。 取引行為譲渡対価譲渡人譲受人等無償譲渡無し譲渡所得（みなし譲渡）受贈益＋贈与税低額譲渡①時価の1/2未満譲渡所得（みなし譲渡）受贈益＋贈与税低額譲渡②時価の1/2以上譲渡所得受贈益＋贈与税時価譲渡時価と同額譲渡所得–高額譲渡時価を超えた金額譲渡所得＋一時所得・給与所得寄付金・給与個人から法人へ不動産を譲渡した場合の課税関係のまとめ 基本的に譲渡人である個人に対しては所得税が課され、譲受人である法人に対しては法人税が課されます。 ただし譲渡対価の額や個人と法人との関係に応じて、個人については所得の種類が異なり、法人については益金や損金に算入される額が異なるとともに、場合によっては法人またはその既存株主に対して贈与税が課されます。 ２．無償譲渡の場合 無償譲渡 個人が法人に対して不動産を無償で譲渡した場合は、個人については「みなし譲渡」として取り扱い譲渡所得税が課されます。法人については当該不動産の贈与を受けたものとして取り扱い、受贈益を益金算入するとともに、その法人またはその既存株主に対して贈与税が課されます。 内容譲渡人譲受人等課税関係譲渡所得税法人税＋贈与税取得価額-適正時価取得日-取得日無償譲渡の場合の課税関係・取得価額 (1) 譲渡人の課税関係 みなし譲渡所得課税 個人が法人に対して不動産を無償で譲渡した場合は、所得税法第59条第1項第1号の適用により、当該不動産を時価で譲渡したものとみなして、その不動産の保有期間中の「含み益」に対して譲渡所得税が課されます。（この取り扱いは、法人に対して遺贈した場合も同様です。） （贈与等の場合の譲渡所得等の特例）第59条 次に掲げる事由により居住者の有する山林（事業所得の基因となるものを除く。）又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなす。贈与（法人に対するものに限る。）又は相続（限定承認に係るものに限る。）若しくは遺贈（法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。）著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡（法人に対するものに限る。）所得税法｜e-Gov (2) 譲受人の課税関係 譲受人である法人の課税関係は、①通常の法人である場合と、②一定の社団等である場合の別に応じて課税関係が異なります。 なお、一定の社団等とは相続税法第66条第1項に規定する社団・財団及び同条第4項に規定する法人をいいます。 （人格のない社団又は財団等に対する課税）第66条 代表者又は管理者の定めのある人格のない社団又は財団に対し財産の贈与又は遺贈があった場合においては、当該社団又は財団を個人とみなして、これに贈与税又は相続税を課する。この場合においては、贈与により取得した財産について、当該贈与をした者の異なるごとに、当該贈与をした者の各一人のみから財産を取得したものとみなして算出した場合の贈与税額の合計額をもって当該社団又は財団の納付すべき贈与税額とする。２ 前項の規定は、同項に規定する社団又は財団を設立するために財産の提供があった場合について準用する。３ 前二項の場合において、第一条の三又は第一条の四の規定の適用については、第一項に規定する社団又は財団の住所は、その主たる営業所又は事務所の所在地にあるものとみなす。４ 前３項の規定は、持分の定めのない法人に対し財産の贈与又は遺贈があった場合において、当該贈与又は遺贈により当該贈与又は遺贈をした者の親族その他これらの者と第64条第1項に規定する特別の関係がある者の相続税又は贈与税の負担が不当に減少する結果となると認められるときについて準用する。相続税法｜e-Gov ① 通常の法人である場合の課税関係 法人が個人から不動産を無償で譲り受けた場合には、譲受け法人では受贈益を認識するとともに、その譲受け法人の既存株主に対して贈与税が課されます。 譲受けた法人の課税関係 譲受人である法人が通常の法人である場合は、当該不動産の時価相当額を受贈益として益金算入します。 土地・建物3,600万円受贈益3,500万円現金預金（取得費用）100万円通常の法人の場合の取得時の仕訳 譲受けた法人の既存株主の課税関係 法人が無償で不動産を譲り受けると資本金が増加しますので、株式の価値も増価します。この場合、当該不動産を譲り受けた法人の既存株主は、不動産の無償譲渡を通じて株式価値の増価という特別の利益を得ますので、相続税法第9条の適用により、その株式価値の増価につき贈与税が課されます。 既存株主の特別の利益に対する課税 第９条 第５条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額（対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額）を当該利益を受けさせた者から贈与（当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈）により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。相続税法｜e-Gov ② 一定の社団等である場合の課税関係 譲受人である法人が次の一定の社団等である場合に、その社団等を個人とみなして贈与税が課されます（相続税法第66条第1項・第2項・4項）。 代表者又は管理者の定めのある人格のない社団または財団（PTA、同窓会、町内会など）持分の定めのない法人（当該無償譲渡により贈与者の親族等の相続税または贈与税が不当に減少する結果になると認められる場合に限ります。） 譲受人である法人が一定の社団等である場合の税務処理は、次の通り２段階で行います。（各数値は(3)の設例を参照） Step1:法人税法上の処理 法人税法上、人格の無い社団または財団は法人とみなされますので、一定の社団等が不動産を無償で譲り受けた場合は、その不動産の時価相当額を法人税法上の受贈益として益金算入します（法人税法第22条第2項）。 土地・建物3,600万円受贈益3,500万円現金預金（取得費用）100万円法人税法上の仕訳 この場合の不動産の時価は「適正時価」であることに注意します。 第二款 各事業年度の所得の金額の計算の通則第22条 内国法人の各事業年度の所得の金額は、当該事業年度の益金の額から当該事業年度の損金の額を控除した金額とする。２ 内国法人の各事業年度の所得の金額の計算上当該事業年度の益金の額に算入すべき金額は、別段の定めがあるものを除き、資産の販売、有償又は無償による資産の譲渡又は役務の提供、無償による資産の譲受けその他の取引で資本等取引以外のものに係る当該事業年度の収益の額とする。法人税法｜e-Gov Step2:相続税法上の処理 一定の社団等が個人から贈与を受けた場合には、当該社団等を個人であるものとみなした上で、贈与税も課されます。 この場合、法人税等と贈与税の二重課税の問題が生じますので、当該社団等に課されるべき法人税等相当額を贈与税額から控除することで調整を図ります（相続税法第66条第5項）。ただし、控除可能な法人税等相当額は贈与税額が限度となります。 【贈与税の計算】 (2,700万円 - 110万円）× 50％ - 250万円 = 1,095万円 1,095万円 - 1,095万円※ = 0円 ※1,095万円 ＜ 3,500万円×37％＝1,295万円 ∴1,095万円 なお、無償譲渡の場合における贈与税の計算上の不動産の時価は「財産評価基本通達による評価額」であることに注意します。 第66条５ 第一項（第二項において準用する場合を含む。）又は前項の規定の適用がある場合において、これらの規定により第一項若しくは第二項の社団若しくは財団又は前項の持分の定めのない法人に課される贈与税又は相続税の額については、政令で定めるところにより、これらの社団若しくは財団又は持分の定めのない法人に課されるべき法人税その他の税の額に相当する額を控除する。相続税法｜e-Gov 上記の通り、個人が法人に対して不動産を無償で譲渡した場合は、譲渡人である個人に対しては譲渡所得税が課され、さらに譲受人である法人やその既存株主に対しては法人税や贈与税が課されます。 したがって、個人が法人に対して贈与をする場合には特に慎重な判断が必要となります。なお、この取り扱いは遺贈の場合も同様です。 (3) 設例による解説 Aさん（個人）はB社（法人）に対して次の通り、自己が所有する不動産を無償で譲渡した。 売主（A）の取得価額・・・1,000万円時価（適正価格）・・・3,500万円財産評価基本通達による評価額・・・2,800万円取引価格・・・0円譲渡費用・・・10万円取得費用・・・100万円 無償譲渡 譲渡人（A）所得税：3,500万円 － （1,000万円 + 10万円）＝ 2,490万円 2,490万円 × 譲渡所得税率譲受人（B）①一般の法人の場合 法人税：3,500万円（受贈益：益金） →法人税等相当額＝3,500万円×37%=1,295万円 贈与税：株式価値増価分×贈与税②一定の社団等の場合 法人税：3,500万円（受贈益：益金） →法人税等相当額＝3,500万円×37%=1,295万円 贈与税：(2,800万円 - 110万円）× 50％ - 250万円 = 1,095万円 1,095万円 - 1,295万円 = △200万円 → 0円 ３．低額譲渡（時価の1/2未満）の場合 低額譲渡（時価の２分の１未満） 個人が法人に対して不動産を時価の2分の1に満たない金額で譲渡した場合は、個人については「みなし譲渡」として取り扱い譲渡所得税が課されます。 法人については原則として当該不動産の時価相当額で取得したものとして取り扱い、時価と譲渡対価との差額は受贈益として益金算入します。また、当該法人又はその既存株主に対しては贈与税が課されます。 内容譲渡人譲受人等課税関係譲渡所得税法人税＋贈与税取得価額-適正時価取得日-取得日時価の2分の1未満の譲渡による場合の課税関係・取得価額 (1) 譲渡人の課税関係 みなし譲渡所得課税 個人が法人に対して不動産を時価の2分の1に満たない金額で譲渡した場合の譲渡人の課税関係は、所得税法第59条第1項第2号の適用により、当該不動産を時価で譲渡したものとみなして、その不動産の保有期間中の「含み益」に対して譲渡所得税が課されます。 （贈与等の場合の譲渡所得等の特例）第59条次に掲げる事由により居住者の有する山林（事業所得の基因となるものを除く。）又は譲渡所得の基因となる資産の移転があった場合には、その者の山林所得の金額、譲渡所得の金額又は雑所得の金額の計算については、その事由が生じた時に、その時における価額に相当する金額により、これらの資産の譲渡があったものとみなす。贈与（法人に対するものに限る。）又は相続（限定承認に係るものに限る。）若しくは遺贈（法人に対するもの及び個人に対する包括遺贈のうち限定承認に係るものに限る。）著しく低い価額の対価として政令で定める額による譲渡（法人に対するものに限る。）所得税法｜e-Gov （時価による譲渡とみなす低額譲渡の範囲）第169条 所得税法第59条第1項第2号（贈与等の場合の譲渡所得等の特例）に規定する政令で定める額は、同項に規定する山林又は譲渡所得の基因となる資産の譲渡の時における価額の２分の１に満たない金額とする。所得税法施行令｜e-Gov (2) 譲受人の課税関係 譲受人である法人の課税関係は、①通常の法人である場合と、②一定の社団等である場合の別に応じて課税関係が異なります。 ① 通常の法人である場合の課税関係 譲受けた法人の課税関係 譲受人である法人が通常の法人である場合は、当該不動産の時価（適正時価）と譲渡対価との差額を受贈益として益金算入します。 土地・建物5,150万円現金預金（譲渡対価）1,000万円現金預金（取得費用）150万円受贈益4,000万円通常の法人の場合の取得時の仕訳 なお、法人税法上、低額譲受けによる受贈益を益金算入すべき旨の明文規定はありませんが、過去の最判例（平成7年12月19日第三小法廷判決）から時価と譲渡対価との差額は受贈益として認識の上、益金算入すべきこととなっています。 譲受けた法人の既存株主の課税関係 法人が不動産を時価より低い対価で取得した場合は、時価（適正時価）と譲渡対価との差額に相当する金額の資本金が増加することとなるため、その分だけ株式の価値も増価します。 この場合、当該不動産を譲り受けた法人の既存株主は、不動産の低額譲渡を通じて株式価値の増価という特別の利益を得ますので、相続税法第9条の適用により、その株式価値の増価につき贈与税が課されます。 低額譲渡の場合の既存株主の特別の利益に対する課税 第９条 第５条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額（対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額）を当該利益を受けさせた者から贈与（当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈）により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。相続税法｜e-Gov ② 一定の社団等である場合の課税関係 譲受人である法人が次の一定の社団等である場合に、その社団等を個人とみなして贈与税が課されます（相続税法第66条第1項・第2項・4項）。 代表者又は管理者の定めのある人格のない社団または財団（PTA、同窓会、町内会など）持分の定めのない法人（当該低額譲渡により贈与者の親族等の相続税または贈与税が不当に減少する結果になると認められる場合に限ります。） 譲受人である法人が一定の社団等である場合の税務処理は、次の通り２段階で行います。（各数値は(3)の設例を参照） Step1:法人税法上の処理 一定の社団等が不動産を時価に満たない金額で譲り受けた場合は、その不動産の時価（適正時価）と譲渡対価との差額を受贈益として益金算入します（法人税法第22条第2項）。 土地・建物5,150万円現金預金（譲渡対価）1,000万円現金預金（取得費用）150万円受贈益4,000万円法人税法上の仕訳 Step2:相続税法上の処理 一定の社団等が個人から贈与を受けた場合には、当該社団等を個人であるものとみなした上で、時価（適正時価）と譲渡対価の差額につき贈与税が課されます。 この場合、法人税等と贈与税の二重課税の問題が生じますので、当該社団等に課されるべき法人税等相当額を贈与税額から控除することで調整を図ります（相続税法第66条第5項）。ただし、控除可能な法人税等相当額は贈与税額が限度となります。 【贈与税の計算】 {(5,000万円 - 1,000万円） - 110万円)}× 55％ - 400万円 = 1,739.5万円 1,739.5万円 - 1,480万円※ = 259.5万円 ※1,739.5万円＞4,000万円×37%=1,480万円 ∴1,480万円 上記の通り、個人が一定の社団等に時価の2分の1に満たない金額で不動産を譲渡した場合は、譲渡人である個人に対して譲渡所得税が課され、さらに譲受人である法人又はその既存株主に対しては法人税及び贈与税が課されますので、個人が法人に対して低額譲渡をする場合には特に慎重な判断が必要となります。 (3) 設例による解説 Aさん（個人）はB社（法人）に対して、次の通り自己が所有する不動産を著しく低い価格で譲渡した。 売主（A）の取得価額・・・1,000万円時価（適正価格）・・・5,000万円取引価格・・・1,000円譲渡費用・・・50万円取得費用・・・150万円財産評価基本通達による価格・・・4,000万円 低額譲渡（時価の２分の１未満） 譲渡人（A）所得税：5,000万円 － （1,000万円 + 100万円）＝ 3,900万円 3,900万円 × 譲渡所得税率譲受人（B）①一般の法人の場合 法人税：4,000万円（受贈益：益金） →法人税等相当額＝4,000万円×37%=1,480万円②一定の社団等の場合 法人税：4,000万円（受贈益：益金） →法人税等相当額＝4,000万円×37%=1,480万円 贈与税：{(5,000万円 - 1,000万円) - 110万円)}× 55％ - 400万円 = 1,739.5万円 1,739.5万円 - 1,480万円※ = 259.5万円 ※1,739.5万円 &gt; 1,480万円 ∴1,480万円 ４．低額譲渡（時価の1/2以上）の場合 低額譲渡（時価の２分の１以上） 個人が法人に対して不動産を時価の2分の1以上の金額で低額譲渡した場合は、個人については実際の取引価格に基づき譲渡所得税の計算を行います。 法人については、基本的には時価の1/2未満の低額譲渡の場合と同様の取り扱いとなり、当該不動産を時価相当額で取得したものとして取り扱い、譲渡対価との差額は受贈益として益金算入します。また、当該法人又はその既存株主に対しては贈与税が課されます。 内容譲渡人（売主）譲受人（買主）課税関係譲渡所得税法人税＋贈与税取得価額-適正時価取得日-取得日時価の1/2未満の譲渡による場合の課税関係・取得価額 (1) 譲渡人の課税関係 個人が法人に不動産を時価の2分の1以上の金額で低額譲渡した場合の課税関係は、時価の1/2未満の価額により譲渡した場合と異なり、譲渡人である個人については、原則として「実際の取引価額」に基づき譲渡所得の計算を行います。 ただし、譲受人である法人が譲渡人の同族会社等に該当する場合には、所得税法第157条の適用により、時価による譲渡があったものとして譲渡所得税が課される可能性があります。 （同族会社等の行為又は計算の否認等）第157条 税務署長は、次に掲げる法人の行為又は計算で、これを容認した場合にはその株主等である居住者又はこれと政令で定める特殊の関係のある居住者（その法人の株主等である非居住者と当該特殊の関係のある居住者を含む。第4項において同じ。）の所得税の負担を不当に減少させる結果となると認められるものがあるときは、その居住者の所得税に係る更正又は決定に際し、その行為又は計算にかかわらず、税務署長の認めるところにより、その居住者の各年分の第120条第1項第1号若しくは第3号から第8号まで（確定所得申告書の記載事項）又は第123条第2項第1号、第3号、第5号若しくは第7号（確定損失申告書の記載事項）に掲げる金額を計算することができる。 法人税法第2条第10号（定義）に規定する同族会社イからハまでのいずれにも該当する法人3以上の支店、工場その他の事業所を有すること。その事業所の2分の1以上に当たる事業所につき、その事業所の所長、主任その他のその事業所に係る事業の主宰者又は当該主宰者の親族その他の当該主宰者と政令で定める特殊の関係のある個人（以下この号において「所長等」という。）が前に当該事業所において個人として事業を営んでいた事実があること。ロに規定する事実がある事業所の所長等の有するその法人の株式又は出資の数又は金額の合計額がその法人の発行済株式又は出資（その法人が有する自己の株式又は出資を除く。）の総数又は総額の3分の2以上に相当すること。所得税法｜e-Gov (2) 譲受人の課税関係 譲受人である法人の課税関係は、①通常の法人である場合と、②一定の社団等である場合の別に応じて課税関係が異なります。 ① 通常の法人である場合の課税関係 譲受けた法人の課税関係 譲受人である法人が通常の法人である場合は、当該不動産の時価（適正時価）と譲渡対価との差額を受贈益として益金算入します。 土地・建物5,250万円現金預金（譲渡対価）3,000万円現金預金（取得費用）250万円受贈益2,000万円通常の法人の場合の取得時の仕訳 なお、法人税法上、低額譲受けによる受贈益を益金算入すべき旨の明文規定はありませんが、過去の最判例（平成7年12月19日第三小法廷判決）から時価と譲渡対価との差額は受贈益として認識の上、益金算入すべきこととなっています。 譲受けた法人の既存株主の課税関係 法人が不動産を時価より低い対価で取得した場合は、時価（適正時価）と譲渡対価との差額に相当する金額の資本金が増加することとなるため、その分だけ株式の価値も増価します。 この場合、当該不動産を譲り受けた法人の既存株主は、不動産の低額譲渡を通じて株式価値の増価という特別の利益を得ますので、相続税法第9条の適用により、その株式価値の増価につき贈与税が課されます。 低額譲渡の場合の既存株主の特別の利益に対する課税 第９条 第５条から前条まで及び次節に規定する場合を除くほか、対価を支払わないで、又は著しく低い価額の対価で利益を受けた場合においては、当該利益を受けた時において、当該利益を受けた者が、当該利益を受けた時における当該利益の価額に相当する金額（対価の支払があった場合には、その価額を控除した金額）を当該利益を受けさせた者から贈与（当該行為が遺言によりなされた場合には、遺贈）により取得したものとみなす。ただし、当該行為が、当該利益を受ける者が資力を喪失して債務を弁済することが困難である場合において、その者の扶養義務者から当該債務の弁済に充てるためになされたものであるときは、その贈与又は遺贈により取得したものとみなされた金額のうちその債務を弁済することが困難である部分の金額については、この限りでない。相続税法｜e-Gov ② 一定の社団等である場合の課税関係 譲受人である法人が次の一定の社団等である場合に、その社団等を個人とみなして贈与税が課されます（相続税法第66条第1項・第2項・4項）。 代表者又は管理者の定めのある人格のない社団または財団（PTA、同窓会、町内会など）持分の定めのない法人（当該低額譲渡により贈与者の親族等の相続税または贈与税が不当に減少する結果になると認められる場合に限ります。） 譲受人である法人が一定の社団等である場合の税務処理は、次の通り２段階で行います。（各数値は(3)の設例を参照） Step1:法人税法上の処理 一定の社団等が不動産を時価に満たない金額で譲り受けた場合は、その不動産の時価（適正時価）と譲渡対価との差額を受贈益として益金算入します（法人税法第22条第2項）。 土地・建物5,250万円現金預金（譲渡対価）3,000万円現金預金（取得費用）250万円受贈益2,000万円法人税法上の仕訳 Step2:相続税法上の処理 一定の社団等が個人から贈与を受けた場合には、当該社団等を個人であるものとみなした上で、時価（適正時価）と譲渡対価の差額につき贈与税が課されます。 この場合、法人税等と贈与税の二重課税の問題が生じますので、当該社団等に課されるべき法人税等相当額を贈与税額から控除することで調整を図ります（相続税法第66条第5項）。 【贈与税の計算】 {(5,000万円 - 3,000万円） - 110万円)}× 50％ - 250万円 = 695万円 695万円 - 695万円※ = 0円 ※695万円＜2,000万円×37%=740万円 ∴695万円 (3) 設例による解説 Aさん（個人）はB社（法人）に対して、次の通り自己が所有する不動産を時価の1/2以上の金額で低額譲渡した。 売主（A）の取得価額・・・1,000万円時価（適正価格）・・・5,000万円取引価格・・・3,000円譲渡費用・・・100万円取得費用・・・250万円財産評価基本通達による価格・・・1,400万円 低額譲渡（時価の２分の１以上） 譲渡人（A）所得税：5,000万円 － （3,000万円 + 100万円）＝ 1,900万円 1,900万円 × 譲渡所得税率譲受人（B）①一般の法人の場合 法人税：2,000万円（受贈益：益金） →法人税等相当額＝2,000万円×37%=740万円②一定の社団等の場合 法人税：2,000万円（受贈益：益金） →法人税等相当額＝2,000万円×37%=740万円 贈与税：{(5,000万円 - 3,000万円) - 110万円)}× 50％ - 250万円 = 695万円 695万円 - 695万円※ = 0円 ※695万円 &lt; 740万円 ∴695万円 ５．時価譲渡の場合 時価譲渡 個人が法人へ不動産を時価で譲渡した場合は、売主および買主ともに「売買」として取り扱います。 内容譲渡人（売主）譲受人（買主）取引行為の種類売買売買課税関係所得税-取得価額-取引価格取得日-取引日時価譲渡の場合の課税関係・取得価額 (1) 譲渡人の課税関係 譲渡人については、実際の取引価格により譲渡所得の計算を行います。したがって、譲渡益が生じれば「所得税」が課され、譲渡損が生じれば他の譲渡所得と内部通算が可能です。 (2) 譲受人の課税関係 譲受人については課税関係はありません。 (3) 設例による解説 Aさん（個人）はB社（法人）に対して、次の通り自己が所有する不動産を時価で譲渡した。 売主（A）の取得価額・・・1,000万円時価（適正価格）・・・5,000万円取引価格・・・5,000円譲渡費用・・・150万円取得費用・・・300万円 時価譲渡 譲渡人（A）所得税：5,000万円 -（1,000万円 + 150万円）＝ 3,850万円（譲渡所得） 3,850万円 × 譲渡所得税率譲受人（B）課税関係なし取得価額：5,000万円＋300万円＝5,300万円 ６．高額譲渡（時価超）の場合 高額譲渡 個人が法人へ不動産を時価より高い金額で高額譲渡した場合は、売主及び買主ともに「売買＋贈与」として取り扱いますが、個人と法人との関係に応じて所得の種類あるいは費用の種類が異なります。 内容譲渡人（売主）譲受人（買主）取引行為の種類売買＋贈与 or 給与売買＋寄付 or 給与 or 役員報酬課税関係所得税＋贈与税-取得価額-時価取得日-取引日高額譲渡の場合の課税関係・取得価額 (1) 譲渡人の課税関係 個人から法人へ高額譲渡があった場合の譲渡人の課税関係 個人が法人に対して高額譲渡をした場合には、①時価と取得価格との差額部分の課税関係と、②取引価格と時価との差額部分の課税関係を、次の通り分けて考えます。 ① 時価と取得価格との差額部分の課税関係 個人が法人に対して高額譲渡をした場合の時価と取得価格との差額は、譲渡所得税の課税対象となります。 ② 取引価格と時価との差額部分の課税関係 個人が法人に対して高額譲渡をした場合の取引価格と時価との差額は所得税の総合課税の対象となりますが、譲渡人である個人と譲受人である法人との関係性に応じて、次の通り所得の種類が異なります。 個人と法人との関係所得の種類個人と法人との関係に特別な関係無し一時所得個人が法人の従業員・役員給与所得取引価格と時価との差額部分の所得の種類の違い (2) 譲受人の課税関係 譲受人である法人については、不動産を時価により取得したものとして取り扱いますが、取得価格（時価）と譲渡対価との差額部分の取り扱いは、その法人と個人との関係に応じて次の通り異なります。 個人と法人との関係科目損金算入可能額特別な関係無し寄付金一般寄付金の損金算入限度額まで損金算入可能法人の従業員給与原則として、全額損金算入可能法人の役員役員報酬原則として、全額損金算入不可譲渡対価と時価との差額部分の取り扱い (3) 設例による解説 Aさん（個人）はB社（法人）に対して、次の通り自己が所有する不動産を時価より高い価格で譲渡した。 売主（A）の取得価額・・・1,000万円時価（適正価格）・・・5,000万円取引価格・・・8,000円譲渡費用・・・250万円取得費用・・・350万円 高額譲渡 譲渡人（A）所得税（分離）：5,000万円 -（1,000万円 + 250万円）＝ 3,750万円（譲渡所得） 3,850万円 × 譲渡所得税率所得税（総合）：8,000万円 - 5,000万円 =3,000万円（総合課税の所得）譲受人（B）法人税 ：8,000万円 - 5,000万円 =3,000万円（寄付金 or 給与 or 役員報酬）取得価額：5,000万円＋350万円＝5,350万円 ７．実務上の取り扱い 個人と法人との間の不動産譲渡に係る税法理論上の課税関係は上記の通りです。 基本的に法人については、経済合理性に合致した取引行為が行われることを前提とした会計処理が行われます。一方、個人については必ずしも経済合理性に合致した取引行為が行われるわけでもないため、取引価格が時価と多少乖離したとしても、それはそれである意味正常であり、実務上も、税務当局から指摘されたり、あるいは取引価格について否認されることはほとんどありません。 しかしながら、個人が法人の株主であったり、従業員又は役員であったりと特殊な関係にある場合には、租税回避行為が行われる可能性が高いため、課税関係も厳しい取り扱いとなっています。特に個人がその同族会社に対して不動産を譲渡するような場合には、その不動産の適正時価を把握した上で、適正な売買を行わないと思わぬ税負担が生ずる可能性があります。 したがって、個人が同族会社などの特殊関係のある法人に対して不動産を譲渡したり、借地権の設定等をするような場合には、不動産税務に詳しい税理士へ相談することをお勧めいたします。 参考 人格のない社団に対する資産の寄附とみなし譲渡課税（質疑応答事例）｜国税局HP

不動産譲渡

法人から個人への不動産譲渡に係る課税関係｜図解付き

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