目次
1.土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価の基本
(1) 土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価の基本
① 評価の基本
土砂災害特別警戒区域内となる部分を有する宅地の価額は、その宅地のうちの土砂災害特別警戒区域内となる部分が土砂災害特別警戒区域内となる部分でないものとした場合の価額に、次の土砂災害特別警戒区域割合に応じて特別警戒区域補正率表に定める補正率を乗じて計算した価額によって評価をします。
② 適用対象となる宅地
指定の時期
本通達の適用対象となる宅地は、課税時期において土砂災害防止法の規定により指定された特別警戒区域内にある宅地です。課税時期に指定が解除されている場合には、本通達の適用対象外となります。
特別警戒区域と警戒区域
本通達の適用対象となる宅地は、土砂災害警戒区域等における土砂災害防止対策の推進に関する法律第9条1項に規定する「土砂災害特別警戒区域」のみです。同法第7条1項に規定する「土砂災害警戒区域」は本通達の適用対象とはなりません。
なお、土砂災害警戒区域が本通達の適用対象外となるのは、主に次の2点を理由としています。
- 土砂災害警戒区域として指定された宅地は、宅地としての利用が法的に制限されていないため。
- 土砂災害警戒区域は以前より広範囲に指定されていることから、当該区域指定による土地の評価減は、既に土地の価格に織り込まれていると考えられるため。
(2) 特別警戒区域補正率表(H31.1.1以降の相続・遺贈・贈与等に適用)
特別警戒区域の地積÷総地積 | 補正率 |
---|---|
10%以上 | 0.90 |
40%以上 | 0.80 |
70%以上 | 0.70 |
- がけ地補正率の適用がある場合においては、この表により求めた補正率にがけ地補正率を乗じて得た数値を特別警戒区域補正率とします。また、その最小値は0.50となります。
(3) 土砂災害警戒区域内の土地に補正が必要な理由
土砂災害防止法では、都道府県知事は、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、住民等の生命又は身体に危害が生ずるおそれがあると認められる区域で一定のものを土砂災害警戒区域(警戒区域)として指定することができ、この警戒区域のうち、急傾斜地の崩壊等が発生した場合に、建築物に損壊が生じ住民等の生命又は身体に著しい危害が生ずるおそれがあると認められる区域で一定のものを土砂災害特別警戒区域(特別警戒区域)として指定することができることとなっています。
このうち、特別警戒区域内にある宅地については、建築物の構造規制が課せられ、宅地としての通常の用途に供するとした場合に利用の制限があると認められますので、特別警戒区域内に存しない宅地の価額に比して、一定の減価が生ずるものと考えられています。したがって相続税土地評価においては、特別警戒区域内にある宅地の評価については、特別警戒区域補正率を適用することにより、評価額への反映が行われます。
2.土砂災害特別警戒区域内にある宅地の評価の基本

(1) 土砂災害特別警戒区域内にある宅地の計算の概要
土砂災害特別警戒区域内にある宅地の補正は、奥行価格補正、側方路線影響加算、二方路線影響加算、三方又は四方路線影響加算及び不整形地補正、規模格差補正(地積規模の大きな宅地の評価)及び無道路地補正、間口狭小補正をした価額に、特別警戒区域補正率を乗じて評価します。
(2) 土砂災害特別警戒区域内にある宅地の計算例(基本)
次の土地は、普通住宅地区に存する地積209㎡の宅地です。敷地のほぼ半分(110㎡)が土砂災害特別警戒区域に指定されています。

3.土砂災害特別警戒区域内に存し、がけ地等がある宅地の評価

(1) 土砂災害特別警戒区域内に存し、がけ地等がある宅地の計算方法
評価対象地が土砂災害特別警戒区域内に存し、かつ、敷地の一部又は全部にがけ地等がある場合には、特別警戒区域補正率にがけ地補正率を乗じて得た数値を、その評価対象地に対する特別警戒区域補正率として評価計算を行います。
ただし、この場合の特別警戒区域補正率は0.50が下限値となります。
(2) 土砂災害特別警戒区域内に存し、がけ地等がある宅地の計算例
次の土地は、普通住宅地区に所在する地積242㎡の土地の例です。敷地の西側ががけ地で、敷地の中央部が土砂災害特別警戒区域が指定されています。

- 奥行価格補正後の評価対象地の路線価
正面路線価(32千円/㎡)× 奥行価格補正率(1.00)= 32千円/㎡ - 特別警戒区域補正後の評価対象地の路線価
イ)がけ地補正率の査定
㋑がけ地割合
110㎡÷242㎡=45.45%
㋺がけ地補正率
0.84(東)
ロ)特別警戒区域補正率の査定
㋑特別警戒区域割合
110㎡÷242㎡=45.45%
㋺特別警戒区域補正率
0.80
ハ)評価対象地に係る特別警戒区域補正率
イ(0.84)× ロ(0.80)=0.672 > 0.50
∴ 0.67(小数点以下2位未満を切捨て)
ニ)特別警戒区域補正後の評価対象地の路線価
①(32千円/㎡)× ハ(0.67) = 21,440円/㎡ - 自用地としての価格
②(21,440円/㎡)× 242㎡ = 5,188,480円
4.倍率地域に所在する特別警戒区域内にある宅地の評価

倍率方式により評価する地域(倍率地域)に所在する宅地の価額は、その宅地の固定資産税評価額に倍率を乗じて評価することとしています。
特別警戒区域内の宅地の固定資産税評価額の算定においては、特別警戒区域の指定による土地の利用制限等が土地の価格に影響を与える場合には、当該影響を適正に反映させることとされており、特別警戒区域に指定されたことに伴う宅地としての利用制限等により生ずる減価は、既に固定資産税評価額において考慮されていると考えられています。
したがって、倍率地域に所在する特別警戒区域内にある宅地については、本通達の適用対象とされていません。
5.特別警戒区域内にある市街化農地等の評価

市街地農地、市街地周辺農地、市街地山林及び市街地原野(市街地農地等)並びに宅地と状況が類似する雑種地については、宅地として利用することを前提とした評価、すなわち宅地比準方式により評価をすることとしています。
したがって、これらの土地の評価においては、土砂災害特別警戒区域の指定による宅地としての利用の制限を評価額へ反映する必要がありますので、本通達を適用することとなります。